【間に合わない給付】
定年になり、ハローワークに行って、失業保険(正式には雇用保険の基本手当)の手続きをした。
実際にやってみて気づいたのは、その給付の遅さである。私の場合は勤め先の対応の問題もあり、離職票をもらうのに1ヶ月半かかった。その後、なぜか1週間の空白期間を置く。そしてやっと給付する期間に入り、3週間後にやっと初めての失業保険がもらえる。実際に失業保険がもらえるのは離職から2ヶ月半後だった。
【自己都合退職】
自己都合退職と判断されると、さらに3ヶ月後の給付開始になる。なんと5ヶ月以上も無収入になってしまう。
私のような定年退職は別として、会社を辞めるときは、多くは人間関係などにギクシャクしたものがあったからだろう。あるいは家族の問題などをかかえての離職だろう。それで辞めたら自己都合退職。雇用保険は3ヶ月間オアズケ。制度設計した役人は好きで会社を辞めるヤツばかりいると思っているのだろう。
【失業保険は何のため?】
失業保険は失職したらすぐに困窮に陥るのではなく、余裕を持って次の仕事を探せるようにするためのものだ。5ヶ月間無収入だったら、退職金のない若い人は家賃も払えなくなってしまう。これではブラック企業とわかっても、なかなか辞めるわけにはいかない。心身症の若者が多くなっても仕方がない。要するにセーフティーネットとして失業保険が機能していないのだ。
【失業保険会計は黒字】
大量失業時代が続いている。しかし、失業保険会計は黒字である。勤めているときには労働者、会社側、双方から保険料を取る。払う段になると、給付をできるだけ遅らせる。職業訓練だって、申し訳程度しかやっていないし、公共職業訓練校の場合、訓練開始の3ヶ月も前に募集を締め切ってしまう。これでは黒字になるのは当たり前だ。雇用保険は2兆円の収入に対して失業給付は1兆5000億円。余ったお金は役人の天下り先の特別行政法人などに補助金としてばらまいたり、余り関係ない事業に使ったり。
【雇用保険制度の見直しを】
失業したら、すぐに失業保険の給付を始めるべきだ。たとえ、自己都合退職でも。どうせ、過去1年間働いていない人間には失業保険の受給資格がないのだから、働く気のない人間に給付することにはならない。もし、離職後すぐに失業保険が給付できないなら、失業保険制度自体、やめてしまった方がいい。低所得者の給与からも天引きしているのだし、会社側にも負担になっている。企業にとって正社員なら雇用保険料が必要だが、派遣社員ならいらない。派遣社員の方がコストが安くつく。雇用保険制度は結果として正社員の雇用を抑制する作用を持っているのだ。セーフティーネットとして機能しない失業保険は労働者にとってさえ有害だ。