イギリスがEUを離脱することを受けて、為替や株価が動いている。
といっても、ポンドでさえ、155円から140円に10%程度下がっているに過ぎない。
もともとイギリスはEUにいると言っても、通貨はユーロではなく、ポンド。入国の際のパスポートチェックもしっかりあった。
要は関税だけなのだろう。EUの関税は結構高いから、輸出入では不利になる企業もあるだろう。しかし、国全体としては大したことはないのではないか。
私が気になるのはタックスヘイブンの影響だ。ロンドンの金融センターは実はタックスヘイブンとして大きな比重を占めているらしい。
この金がこれまでのようにEU域内を自由に動けないとすれば、タックスヘイブンの縮小につながるかもしれない。
タックスヘイブンはケイマン諸島やパナマにあることになっているが、それは法律的な問題だけで、実際の取引はロンドンやニューヨーク、スイスなどの金融センターで行われているらしい。常識で考えても大事な金を知らないところに置くわけがない。高度なインチキ取引をできる能力は専門知識と経験が蓄積された先進国でしかあり得ない。現金がケイマン諸島に送られたり、帳簿をケイマン諸島で管理しているわけではない。ケイマン諸島は法律的な抜け穴と情報隠蔽の傘を提供しているだけ。実体は金融大国のイギリスやアメリカ、スイスなどの側にあるらしい。
ロンドンのタックスヘイブンが縮小すれば、為替や株の動きに影響があるだろうが、それは、タックスヘイブンを利用できない大多数の人間には歓迎すべきことだ。
余波として円高が進んでいる。円高で困るのは輸出企業だ。しかし、自動車メーカーを含め、ほとんどのメーカーは海外移転してしまった。日本はもはや物作りの国ではなくなっている。ものを作って輸出しているのは日本ではなく中国などの中進国だ。日本は工業製品の輸入国である。円高は石油をはじめ輸入品の価格を下落させ、国民の実質所得を上昇させる。
株価は円高で下がるが、株を持っているのは外国人と金持ちだ。不労所得で儲けている人が円高で損をしたからと言って、社会的に問題な訳ではない。
国際的な事件が起きるとマスコミはその影響を大々的に報道する。それは報道機関の役割だからだ。影響自体が大々的な訳ではない。それを見極めるのがメディア・リタラシーだ。物事を見極める目を養うということだ。